トロント大学 民族問題へ対策講じる[地元紙からピックアップ]

今回は、現地の新聞から面白いものがあったのでご紹介!カナダの先住民族に関する話です。トロントに住んでいるとなかなかこういった問題に直面する機会はないかもしれませんが、カナダについてもっと知ろうと思えるような良い機会になったら嬉しいです。

①トロント大学が先住民族への認識向上へ対策

トロント大学は生徒たちのカナダ先民族に対しての歴史的、言語的観点からの認識向上を目指すそう。19日、Metoro紙が報じました。
具体的な対策案としては先住民の使用している言語を重点的に履修する科目の設置、一定数の生徒に原住民族に関する社会問題を学ぶ講義の受講を義務化することなど多岐に渡るそう。
現段階では具体的なことは決まっていないが、先住民族としてのアイデンティティーを大学教育に取り込むことは重要である。とJonathan Hamilton-Diaboさんは語る。またファーストネーションの言語学習に関してはすでに話し合いが持たれているそうです。同氏は原住民族の言語学習は違いを作る一つのキーポイントとなると予測しています。「既存の社会構造によって引き起こされている民族問題も一定数の存在しているのは確か。こうした問題意識を教育現場に持ち込めるとしたらそれは大きな意味を成すね。また、こういった分野の知識はトロント大学をもっとアクセシブルなものにするし、もっと多くの人が問題意識を持ってくれると思うよ。」と述べました。

ということで、今回は少し硬い内容ですが、カナダと先住民族の話を…

②カナダの先住民族(アボリジニー)って?

カナダには大きく分けて3グループの先住民族が存在しています。その数1,200,000人とカナダ全体の人口の4パーセントを占めています。
1つ目が「ファーストネーションズ」。はじめに北米に居住していた人たち。人口は852,000人でカナダのアボリジニの約60パーセントを占めます。
2つ目が「メティ」。ファーストネーションズと移住してきたヨーロッパ人の混血を指します。人口は452,000人。アボリジニの32パーセントを占め、バンクーバーにも住んでいます。
そして3つ目が「イヌイット」。人口は59,445人でアボリジニの4,2パーセントを占めます。カナダ北部に多く住んでいます。人種的には日本人と近いとか。

③具体的な問題点

“Diversity. Not Assimilation.”という言葉もあるように多文化共生が実現していると思われがちなカナダですが、先住民族との問題の解決はまだ時間がかかりそう。
カナダの先住民族はこれまで、差別にあったり、教育や土地所有の権利が保障されてきませんでした。前首相のフーパー氏が公式にアボリジニの人たちに謝罪したように、いまでも大きな社会問題になっています。原住民族の人口比率が高いウィニペグ市では犯罪件数も多く、アボリジニの人口比率が全体の市の10パーセントにもかかわらず、刑務所に収容されている70パーセントが原住民族であるというデータもあります。
しかし、2015年の6月に土地の支配権をめぐる裁判で、最高裁判所が先住民族の訴えを認める判決を言い渡しました。これにより、カナダの先住民と連邦・州政府の土地開発をめぐっての主導権が変わることを予測している人もいて、少しずつ状況は変わってきていると見ることもできると思います。実際、先住民族の年齢比率は25歳以下が最も多く、人口も増加しているそうでこれからの待遇や立場は変わっていくかもしれません。

いかがでしたでしょうか?日本にも同様の問題が存在していますが、民族の多様性、広大な土地からカナダではもっと複雑な問題であると感じました。興味を持った方はいろいろ調べてみると面白いかもしれません。

中西一樹

中西一樹

1994年生まれ。大学ではメディア専攻。2015年9月からワーホリでトロントへ。FC.TokyoとTottenham Hotspurのファン。