カナダとシリア難民の話 ~What’s going on & What is the reaction of Cana dian?~[地元紙からピックアップ]

Toronto Plaza Hotelには600人のシリア難民が生活している。このホテルはトロント市内に5つあるシリア難民のための仮設住居の一つだそう。トロントでの新居が決まり次第、退去するというシステム。今回はその実態をMetoro紙のインタビュー記事から抜粋するとともにカナダにおけるシリア難民の受け入れ状況について簡単にまとめてみました。

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COSTIとは?

http://www.costi.org
COSTIとはカナダへの移民に対し、教育、雇用、居住など多岐にわたるサポートを供給する多文化共生を目的とした機関のことで、シリア難民に関しての支援も行っています。
彼らはこれらのホテルに臨時事務所を持っており難民の生活面や精神面のケアを行っています。しかし一部の難民は質素な食事、窮屈な生活環境などに不満を持っているようです。

難民の声

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年末に3人の子供を含む5人家族で渡加してきたある家族は、新居が確保できていないことに加え、将来の不安定さにフラストレーションを募らせているそう。しかし、同時に彼らは自分たちを受け入れてくれたカナダに心から感謝している。父親は語る。「まるで王冠を被っているかのような気分だよ。」

同じく年末に北米第4の都市にやってきた家族はトロントでの高い生活費を捻出するため、貯金を始めた。しかし、子供はストレスからかホテルから供給された食事を摂っていないそう。カナダの食事が合わないようだ。そのため、オリーブやピタなど母国で口にしていたものを購入するため、余分な出費が嵩んでしまっている状況だ。

長いホテルでの待機時間も苦悩の一つのよう。英語を話すことができない上に、車などの個人的な交通手段も持ち合わせていないため、外出も難しい状況だとか。

しかし、ほとんどの人がカナダに来れて嬉しいと語っている。ホテルなどの環境への不満は二の次だそう。特にカナダ首相であるジャスティン・トルドーの人気は絶大。

このようにシリア難民のサポート体制には、住居の確保、食、娯楽という観点から見ると課題がありそうですが、まだまだこれからというところでしょうか。

ここで、幾つかカナダにおけるシリア難民への支援等についてまとめてみました。

そもそも何が起こったの?

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2011年におこったシリアのアサド政権に対する民衆の反発がことの発端です。独裁政権であったアサド政権に対し、民衆はシリアにおける民主主義と表現の自由を求めデモを行いました。これをアサド政権は弾圧。これに反発し民衆は革命軍を結成。これにはアメリカも加勢しました。アサド政権VS革命軍、この紛争によりシリア国内は困窮状態に陥りました。
さらに同時期、2011年から2014年に渡って、隣国のイラクからイスラム国がシリアでの影響力を強め始めます。アサド政権対革命軍という構図にイスラム国が新たに加わったことにより国内は荒廃状態。さらに、アメリカ、ロシアやヨーロッパ諸国の介入により事態はさらに混乱。多くのシリア国民は国内での生活を諦め、国外に移住することを決断しました。カナダも移住先の一つになっています。

カナダの対応

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トルドー首相は計画に若干の遅れはあるようですが、今年2月末までに 250,000人のシリア難民を受け入れる政策を発表。

去年の演説では

“This year, Canadians are welcoming thousands of Syrian refugees to our country.”
カナダは多くのシリア難民を受け入れを歓迎する。

“I encourage all Canadians to show them a warm holiday welcome in keeping with our values of compassion, kindness and generosity”
私たちの持つ譲り合い、優しさ、寛容さと共に、暖かい休日というものを彼らに見せてくれる嬉しい。

と語っています。イケメン。

 カナダ国内の反応は?

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今回の移民受け入れに関して、カナディアンはどう思っているのでしょうか。国民放送局CBCコラムからコメントをピックアップしてみました。
http://live.cbc.ca/Event/How_do_you_think_Canadian_money_is_helping_Syrian_refugees

コメント

まず、他国のことより自国の事を優先すべきだよ。こんなシステムはジョークみたいなもんでやめるべきだ。

支援を与える側も受け取る側も責任を持ったやり方でやるべきだね。

カナダ国内にでさえ飲む水がなかったり、家がない人もいるから、膨大なお金はそういったことに使われるべき。

税金がこんなことに使われてるなんて!

すばらしい仕事だね!

カナダは移民によって成り立ってるという点において特筆するべき国だしやれることはたくさんあるね。

借金いくらあると思ってる?他人を救う前にまずは自分から。

どうして関係ないことに多額のお金を払って、さらに有罪感まで感じなくちゃいけないの?

とても複雑な問題・・・

トルコやサウジアラビアみたいなイスラム国を支援してる国にやらせろよ。

国家として優先すべき問題はなんだろうか?

誰もこんなことにお金を使いたいなんて思ってないよ。

一番良い方法はシリアをこんな状態にした西側諸国を晒し上げることだけど、そんなことは起こらないね。

アルバータ州は北米における中東のような状態になってるから支援が必要だよ。
*アルバータ州では世界的な燃料費の値下げ によって経済的ダメージを受けています。

と、中立性という面からシリア難民受け入れに肯定的な意見も探したのですがなかなか見つからず。世論としては受け入れ反対という側に傾いてるのかなという風に感じました。去年起きたパリでのテロ事件などから安全面での懸念もあるのかなと思います。また、国内での問題に専念すべきという意見も多数見られました。

また、シリア難民側もヨーロッパやアメリカでの生活スタイルが自国のものとあまりにかけ離れているため、適応するのに苦労しているそう。中には自国に戻る人や、トルコやレバノンといった母国に距離的に近く、生活様式も若干似ている国へ再移民する人も。
移民受け入れには、基本的に単一民族である日本人には想像もできないような苦労が多くありそうです。

中西一樹

中西一樹

1994年生まれ。大学ではメディア専攻。2015年9月からワーホリでトロントへ。FC.TokyoとTottenham Hotspurのファン。